桜井夕也初の同人本『TOKYO VIRUS』2005年9月完成 |
解説 |
ウィリアム・ギブスンのサイバーパンクとウィリアム・バロウズのカットアップを組み合わせた、サイバーゴシック/デジタルデカダンス/テクノノワールな小説。脳神経をダイレクトに刺激する文学的ドラッグ。21世紀の狂気がリロードされ、電脳空間に繋がれた意識がハッキングされる……。 A4版、本文34頁、500円。 |
抜粋 |
脳……俺は叫ぶ。[……ボーグは青白い炎に包まれる……]血の色、細いコードが皮膚の上を這い回るテクノ・タナトスに対する正常な免疫反応/ミレニアム・シンドローム/顔は古いコンクリートの中の血に染められた青白い閃光だ。2000年の影、それが今俺を追い詰める……サイバー都市は機能不全]……それは獣のドラムンベース……ハイプを皮膚の下に注射する、ボーグが溶解し狂気じみた叫び声が再生される[……それは俺じゃない。/……WORMがXの亡霊と死の運命を再生する SODOM。ボーグが快楽に溺れる街。俺は虚飾のネオンに彩られた道を歩く。死に象られた月……LUCIFERが舞い降りる。Xを噛み砕いてテクノの轟音の中を泳ぎ渡る。光化学スモッグに汚染された街。死と罪が全てを覆い破壊の天使がその羽根を広げる。コンピューターと繋がれた脳。地下から地鳴りのようなテクノ・コーマが聞こえる中俺は頭を揺らす。胸をX字に切り刻んだパンクスが血を滴らせながら言う。「俺達に未来はあるのか?」俺は答える。「エンジェル・ダストならあるぜ」そいつは笑い剃刀で耳朶を切り落とす。狂乱の夜がやってきて街は偽物の天国と化す。シナプスを流れるテクノ・ジャンクなアシッド。それが俺達にとって全てだった。 虚飾と幻影のネオン。血塗れの天使が幻覚に磔にされる。 ミレニアム・ヘヴンでケミカルな愛(LOVE)を噛み砕く HELL×SODOM 死を運ぶ堕天使。サブリミナルに植え付けられた幻覚。 青白い顔をしたパンクス=死神がXの翼を広げて堕落した街を歩く テクノ・ジャンキー 俺達の視界を覆う狂気の回路 青白い狂気のパルスが俺達の頭脳を刺激する TECHNO HEAVEN 死=ルシファーのひずんだ叫び BRAIN CELL 0 ボーグ=天使のデジタルな意識の辺縁に映るGODの影……遺伝<<亡霊>>的ハイプのDNAが幻覚のマトリックスに消失する……ADAMは堕落した……そして死者が甦る……0……テクノ犯罪の薄暗い暗闇にちらつく虚飾のネオン……HELLに蠢く肉の塊……ヤクの売人とジャンキーの結託した秘密……サイバードラッグが快楽の脳波をなぞる……神経が化学合成したDNAのBPMにクローンが覚醒する……発泡刺青にフェイクのハーケンクロイツが描かれる暗いクラブの中青白いブラックライトがクラウド達を照らす…… スキゾなテクノGOD テクノ・ジャンキーどもが化学的にアップグレードされたXの幻覚(ユメ)を見ている……血塗れの天使……DOLL=染色体の機械の夢がPORNOに犯される[汚れた都市(まち)で俺達の電脳HEADは悲鳴を上げる…… |
入手方法 |
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感想(敬称略) |
AKIRA |
ネオンのように明滅しながら浮遊する邪悪なイメージ、 物語を剥奪された言葉たちは近未来の過酷な現実を映し出す。 オレたちはDead End Street(ドンづまりの路地)に追い込まれたんじない。 Dead End Street から出発するんだ。 すばらしい作品です。 アンビエントのように何度でも読み返せる。 ついにやったな、ユウヤ。 |
白鳥健次(Kenji Siratori) |
TOKYO VIRUS IS DNA_APOCALYPSE! |
河村塔王(河村塔) |
電子のBubbling(泡言語≒喃語)。 ストレート且つ錯綜したcut up。 0と1とその間の鈍く鋭いedge。 継ぎ接がれた虚構と現実の類像(icon)。 久し振りに『生(なま)』の感触を味わいました。 有難う御座います。 |
小山昌宏 |
私は3つの印象をもちました。 1 印象的、瞬間的な文体(カット・バック)であるにもかかわらず、大変ビジュア ルであり、かつ言葉のも抽象性(概念)とのバランスがいい。 それによって、ビジュアルを瞬時にしてイメージに変換でき、生から死への変化、0 →1への「抵抗」、サイバードラッグによる「感染」を感じ取ることができます。 2 前半の文体、カット・バック(心象風景)と「主観」(モノローグ)の対比が、 悪意と混沌の「混乱」を巧みに誘い出し、後半では、モノローグによる、「人格」の 破壊をストレートに感じ取ることができます。 3 「俺の虚像が都市の幻影に消える」というプロローグが、最後であり、始まりで もあり、まさに黙示録としてのTOKYO VIRUSを暗示、終りなき物語として 輪廻している。 「俺」は、あらかじめ実像を奪われていたのであり、「俺」は抵抗することで、その 「虚像」を確認するのみで、もはや「実像」を取り戻すことはできない。それほどま でに、この都市はDNAレベルで汚染されてしまっている。 続編を読ませていただきたい気分です。 それは、 虚像が実像に転換することはあるのか? そもそも、TOKyoそのものが、「虚像」であるとすれば、堕天使ルシファーは、 そんな虚像そのものの水先案内人であるとともに、破壊者であることもできないか? TOKYOがフォノグラフィであるとすれば、この街を何らかの形で、剥いたミカン の皮を表から裏にするようにパラダイムチェンジができないだろうか? そこに興味があります。 また、個人的な「読み」なのですが、「俺」という 人称すら明示しないで、「主観的な」イメージを読み手に送ることはできないか? つまり、断片的な印象、抽象性(概念)に、主観を流し込むことで、よりサイバード ラッグの「毒」を明示できないだろうか? 文体そのものをサイバー化できないだろうか? このあたり、個人的に興味があります。 「生と死と」は 「生徒 使徒」、生と死は現実でもメタレベルでも同一の価値しか 持ちえません。 大雑把な感想にて失礼いたしました。 面白かったです。ありがとうございました。 |
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